はじめに
南アルプスの北端に鋭利な刃のように連なる岩峰群、鋸岳(2,685m)。一般登山道が存在せず、崩壊が進む脆いガレ場と鎖場が連続するこの山は、南アルプスの中でも屈指の難峰として知られています。かねてより心惹かれつつも、その険しさゆえに時期を見定めていましたが、「体力や判断力が充実している今こそ、挑むべき時ではないか」——そんな覚悟を胸に抱き、今回の山行を決断しました。
日帰りや1泊の行程では長時間の過酷な行動を強いられるため、今回は安全第一を最優先とし、六合石室に2連泊する2泊3日の計画を立案。往復ルートとなるため核心部を2度通過する厳しさはありますが、時間を味方につけ、一歩一歩の足場を確かめながら岩と対峙する山旅を選びました。
日付
2026年8月23日〜25日
天候
晴れのち一時雨
歩行距離
18.1 km
登り(累積)
2,594 m
下り(累積)
2,843 m
行動時間
23時間28分(3日間計)
山行レポート
北沢峠から甲斐駒ヶ岳を越え、稜線の避難小屋へ
戸台パーク(南アルプス林道バス乗り場)
早朝の戸台パーク。始発の北沢峠行き南アルプス林道バスを待つ登山者の列ができていました。谷の遥か奥には、これから対峙することになる鋸岳のギザギザとした稜線が朝の空に浮かび上がっています。
北沢峠バス停
バスを降りてすぐに目に入った警告看板。「鹿窓下トラバース崩落のため、ロープ等の装備が不十分なパーティーは立ち入り禁止」との物々しい文言が掲げられていました。身が引き締まる思いで靴紐を結び直します。
双児山への登り
北沢峠から双児山へと高度を上げていきます。樹林帯の合間から振り返ると、南アルプスの女王・仙丈ヶ岳の優美な山容が青空の下にくっきりと広がっていました。
双児山付近の展望
視線を東から南へ向けると、鳳凰三山、アサヨ峰、そして日本第二の高峰・北岳が堂々たる姿を現します。南アルプスの重厚な山並みに囲まれた素晴らしい展望尾根歩きです。
双児山より先を望む
双児山を越えると、次に登る中継峰の駒津峰と、その背後にそびえ立つ甲斐駒ヶ岳の白い山頂ピラミッドが視界に飛び込んできます。白砂と花崗岩の巨塊が圧倒的な存在感を放っています。
09:45 駒津峰(標高2,752m)
岩稜を登りつめて駒津峰の山頂に到着。ここは仙水峠からのルートと合流する格好の休憩適地となっており、甲斐駒ヶ岳へ向かう登山者たちが息を整えていました。
駒津峰からの稜線
谷底から徐々に白いガスが湧き上がってきました。夏の午後特有の大気不安定を予感させる雲の動きに、ややペースを保ちながら先を急ぎます。
甲斐駒ヶ岳の威容
駒津峰から見上げる甲斐駒ヶ岳は、荒々しい岩肌を剥き出しにした大迫力の姿。山肌に刻まれた直登ルートの険しさが手に取るように分かります。
甲斐駒ヶ岳の左手に広がる鋸岳
甲斐駒ヶ岳の左翼には、明日挑むことになる鋸岳の全貌が見渡せました。幾重にも刻まれた岩の鋸歯は、遠目に見ても人を寄せ付けない厳しさを漂わせています。
10:09 六方石(標高2,700m)
巨岩が積み重なる六方石の分岐に到着。ここから直登の岩場ルートと、摩利支天方面を巻く巻き道ルートに分かれます。今回は岩稜の直登路へと足を進めました。
11:35 甲斐駒ヶ岳山頂(標高2,967m)
急峻な白砂と岩の斜面を踏みしめ、日本百名山・甲斐駒ヶ岳の頂に登頂。日曜日とあって山頂は多くの登山者で賑わっていましたが、私の目的地はここからさらに先、静寂に包まれた破線ルートの先です。
甲斐駒ヶ岳から六合石室へ
山頂の賑わいを背に、六合石室方面への下降を開始。あたりは濃いガスに包まれ、視界が急速に悪化してきました。点線(難路)ルート特有の不鮮明な踏み跡が多く、誤った尾根に引き込まれないよう現在地を慎重に確認しながら下ります。
稜線上の鎖場
途中に現れる鎖場。足場はしっかりしているものの、ザックの重みでバランスを崩さないよう三点支持を意識して通過します。
13:33 六合石室に到着
ハイマツの茂る尾根の窪地に、石積みの頑強な小屋「六合石室」が姿を現しました。厳しい稜線上に佇む、登山者にとってのオアシスのような避難小屋です。
六合石室の室内
石室の内部は有志の方々の手によって綺麗に清掃されており、快適に過ごせます。今回はここに2泊し、鋸岳往復のベースキャンプとします。荷物を整えた直後に雨が降り始め、間一髪で濡れずに済みました。
核心の鋸岳縦走。悪絶なガレ場と鹿窓・小ギャップの鎖場
05:27 六合石室を出発
2日目の早朝、いよいよ本山行の核心部である鋸岳を目指して出発。薄明かりの中、朝の澄んだ空気を吸い込みながら気を引き締めます。
稜線より中央アルプス遠望
稜線のわずかな隙間から、西側に中央アルプスの峰々が雲海の上に並んでいるのが見えました。朝の静寂が広がる贅沢な時間です。
六合石室〜三ツ頭のトラバース
小屋の近くには幕営可能な平坦地もありました。ここから三ツ頭へは稜線を外れ、眺望のきかない樹林帯のトラバースが続きます。トラバースとは名ばかりでアップダウンが激しく、踏み跡も錯綜しており気が抜けません。
視界が開け、立ちはだかる第二高点
樹林を抜けると、目の前に第二高点の威圧的な大岩壁が立ちはだかりました。直登するのではなく、写真右寄りに見える広いルンゼ状の草付き・ガレ場を登っていくことになります。
07:25 中ノ川乗越(標高2,512m)
鞍部の中ノ川乗越に到着。ここにはテントが張れそうな整地された幕営跡がいくつか見られました。いよいよここから本格的な急登と悪路が始まります。
第二高点への取り付き
中ノ川乗越から見上げる谷筋。中央の草付き混じりのルンゼ状の斜面を目指して登り返していきます。
第二高点へのガレ場急登
噂通りの凄まじい悪場。足元の石は全く安定しておらず、50cm級の大岩ですら体重をかけると簡単にグラつきます。一歩踏み出すたびにガラガラと崩れ落ち、体力と神経を極限まで削られます。右側の岩壁沿いが比較的硬いですが、枝分かれする谷に迷い込まないよう上を目指します。
荒涼とした岩場に咲く高山植物
遠目には単なる緑の草付きに見えた場所は、過酷な環境に耐えて咲く高山植物のお花畑でした。緊張が続く登攀の中で、心休まる唯一の瞬間です。
08:05 第二高点(標高2,675m)
悪絶なガレ場を登りきり、第二高点に登頂。岩頭には厳かな鉄剣が突き刺さっていました。360度の大展望が広がる素晴らしいピークです。
第二高点からの南アルプス主脈
第二高点からの大パノラマ。甲斐駒ヶ岳から白峰三山へと連なる、南アルプスの雄大な山並みが青空のもとに一望できました。
北方に望む八ヶ岳連峰
北側には八ヶ岳連峰が裾野を広げて佇んでいます。高度感抜群の岩頭からの眺めは格別です。
西側の中央アルプス
西の伊那谷を挟んで、中央アルプスの稜線もはっきりと見渡せます。視界は良好ですが、これから向かうルートの険しさを思うと長居はできません。
第二高点から望む第一高点(鋸岳本峰)
第二高点から望む第一高点(山頂)。一見すると手前の稜線を気持ちよく歩けそうに見えますが、実際はそう甘くありません。山頂直下から右側(戸台川側)の切れ落ちた樹林帯へと大きく下り、大ギャップを越えるルートをとります。
大ギャップへの下降
第二高点から稜線を外れ、急峻な樹林帯を激下り。下りきった先で深く切れ落ちた陰湿なルンゼ(大ギャップから続く沢)を横断し、再び対岸の急斜面を登り返すという過酷なルーティングです。
水流のある小滝状の岩場
前日の雨の影響か、わずかに水が流れる小滝状の岩場にロープが残置されていました。北沢峠の看板にあった「残置ロープに頼るな」という警告を思い出し、体重をかけすぎず慎重に岩を掴んで通過します。
鹿窓への登路
岩壁の途中にぽっかりと空いた「鹿窓」と呼ばれる天然の岩穴が見えてきました。ここへの登りも非常に急なガレ場。先ほどの第二高点への登り以上に傾斜が強く、落石を起こさないよう細心の注意を払います。
鹿窓直下の長大な鎖場
鹿窓直下の急傾斜地には、しっかりとした新しい鎖が設置されていました。ただし、鎖を揺らすと頭上から小石が落ちてくるため、鎖にぶら下がることなく岩の手がかり・足場を確実に拾って登ります。
09:10 鹿窓の岩穴をくぐる
鎖に導かれ、巨岩に空いた鹿窓の内部へ。穴をくぐり抜ける箇所は足場が切れ落ちており、懸垂下降の支点も設置されている難所。高度感に圧倒されながらも、体をねじ込むようにして反対側へ抜けます。
小ギャップへのトラバース
鹿窓を抜けても安心はできません。痩せ尾根を渡り、大岩に巻かれた鎖に沿って進むと、さらにもう一つの切れ込み「小ギャップ」が口を開けて待っていました。
小ギャップの鎖場下降
ほぼ垂直に切れ落ちた岩壁を鎖で下ります。前日の雨で岩肌が湿っており、フリクションが効きにくく非常にスリリング。途中で鎖が細いものに切り替わるため、握り損ねないよう慎重を極めました。
小ギャップを登り返す
小ギャップの底から反対側の岩壁を鎖で登り返します。下りに比べればホールドが目視しやすく、着実に体を持ち上げることができます。
09:49 鋸岳・第一高点(標高2,685m)
幾重の難所を越え、ついに鋸岳の最高峰・第一高点の頂に到達。山頂標識はひっくり返っていましたが、長い憧れだった山頂に立てた喜びが全身を満たします。
山頂からの展望(第二高点・仙丈・北岳)
第一高点から振り返ると、先ほど越えてきた第二高点の鋭角な岩峰と、その背後に北岳や仙丈ヶ岳が悠然と佇んでいました。過酷な行程を歩んだ者だけが出会える至高の景色です。
鋸岳の北西尾根
山頂からさらに北西方向の角兵衛沢方面へと続く稜線。こちら側も深い谷へと切れ落ちており、鋸岳の険しさを物語っています。
第二高点の奥にそびえる甲斐駒ヶ岳
遥か遠くに見える甲斐駒ヶ岳。あそこからここまで歩き通してきた距離の長さを実感します。そして同時に、あの難所をすべて引き返さなければならない現実に向き合います。
復路:小ギャップを登り返す
往路と同じ危険箇所を戻ります。小ギャップの垂直な壁を今度は登り。下りよりも足元が確認しやすく落ち着いて登れますが、疲労が出始める時間帯のため気合を入れ直します。
復路:鹿窓をくぐり下る
再び鹿窓をくぐり、長大な鎖場をバックステップで下降。浮石を蹴り落とさないよう、一歩ずつソール全体で岩を捉えながら下ります。
復路:大ギャップの谷を登り返し第二高点へ
鹿窓下の急激なガレ場を下り、大ギャップから落ちてくる谷を横断して第二高点への急登を登り返します。重力と脆い足場に抗いながらの登高は、まさに体力勝負です。
11:27 再び第二高点へ
登り返して第二高点へ帰着。前方に三ツ頭と、遥か奥に甲斐駒ヶ岳の山頂が見えています。大きな難所を一つクリアしましたが、まだ中ノ川乗越への激下りガレ場が控えています。
12:54 中ノ川乗越で安全圏へ
お花畑の脇のガレ場を慎重に滑り降り、中ノ川乗越へ無事帰還。最大の危険地帯を抜け、心底ホッと息をつきました。しかしここから先もルートを見失いやすいトラバースが続くため、油断は禁物です。
13:56 三ツ頭(標高2,589m)
往路では巻き道を通って通過しなかった三ツ頭のピークへ。振り返ると、先ほどまで格闘していた第一高点と第二高点が堂々たる姿で見送ってくれていました。
14:43 六合石室へ帰還
石室へ戻り着く頃、空から雨粒がパラパラと落ちてきました。往復約9時間、極度の集中力を要する激闘の鋸岳縦走を無事に終えることができました。
水場への下降路
雨が本降りになる前に水場へ。石室から谷側へ約10分、かなりの急斜面を下っていきます。疲れた体には登り返しが応える道のりです。
豊富な湧水
水場では冷たい水が勢いよく湧き出ていました。喉を潤す天然水は格別の美味しさ。水を汲んで石室に戻ると本格的な雨となり、昨日と同じく絶妙なタイミングで天候の難を逃れる幸運に恵まれました。
水場への分岐点
水場への道は、テント適地のような広場から小屋側へ少し入った場所に明瞭な踏み跡があります。利用される方は見落とさないよう注意してください。
快晴の稜線漫歩。甲斐駒ヶ岳再登頂と摩利支天巡り
05:21 最終日の出発
最終日は打って変わって見事な快晴。2日間お世話になった六合石室を丁寧に整頓し、甲斐駒ヶ岳へ向けて出発します。
朝陽を浴びる鋸岳
昇ってきた朝陽が鋸岳の岩峰を赤く染め上げます。遥か後方には中央アルプスの山並みが浮かび、息を呑むような神々しい美しさでした。
白砂の尾根を登る
澄み切った青空の下、甲斐駒ヶ岳の山頂を目指して登り返します。初日とは違い、見通しが良いため足取りも軽やかです。
孤高の岩峰・鋸岳
青空にくっきりと刻まれる鋸岳のシルエット。厳しい試練を与えてくれた山ですが、こうして離れて見ると孤高の美しさに改めて見惚れてしまいます。
雲海の上に浮かぶ八ヶ岳
北東側には見事な雲海が広がり、その海原から八ヶ岳が島のように突き出していました。早朝登山ならではの極上の絶景です。
奥秩父山塊と幾重の雲
奥秩父方面の山並み。高度の異なる雲が二重に重なり、幻想的な自然のグラデーションを作り出していました。
花崗岩の奇岩帯
甲斐駒ヶ岳直下の奇岩が点在する白い尾根を登っていきます。鋸岳の黒々とした脆い岩とは対照的な、明るく堅牢な花崗岩の感触を楽しみます。
ライチョウの親子との出会い
ハイマツの茂みから、なんと3羽のライチョウがひょっこりと姿を現してくれました。人を恐れる様子もなく、目の前をのんびりと横切っていく愛らしい姿に癒されます。
山頂直下のトラバース
山頂手前の岩場トラバース。鎖が整備されていますが足場は極めて良好で、昨日の鋸岳の岩場に比べれば格段の安心感があります。
日本三大急登・黒戸尾根を望む
左手に日本三大急登の一つ、黒戸尾根の長大なスカイラインが見えてきました。標高差2,200mを一気に突き上げるクラシックルートの迫力も圧巻です。
07:08 静まり返る甲斐駒ヶ岳山頂
二度目の甲斐駒ヶ岳山頂。早朝のためまだ他の登山者は誰もおらず、この広大な360度の大展望を一人きりで独占する贅沢を味わいました。
駒ヶ岳神社本宮が鎮座する東峰
三角点のある山頂から、東側の岩峰へと足を伸ばします。信仰の山としての歴史を今に伝える社が祀られています。
南アルプス南部の名峰群
アサヨ峰の奥に北岳、間ノ岳、塩見岳、そして遠く悪沢岳まで。南アルプスの名立たる高峰たちがずらりと整列する圧巻の景色が広がります。
山頂より八ヶ岳を望む
澄み切った秋の空気に近い透明度。八ヶ岳の主峰・赤岳や阿弥陀岳の岩肌までもが手に取るようにクリアに見渡せました。
甲斐駒山頂から見下ろす鋸岳
山頂から見下ろす鋸岳の全稜線。昨日あの一筋の岩尾根を歩き通したのだと思うと、深い達成感と安堵が込み上げてきます。
駒ヶ岳神社本宮への小径
東側のピークへ歩を進めます。花崗岩が風化した白い砂礫の道は、まるで高山の日本庭園を歩いているかのような心地よさです。
08:09 駒ヶ岳神社本宮(標高2,936m)
東峰の社には、無数の奉納剣や石碑が林立していました。古くから多くの修験者や信者が祈りを捧げてきた山岳信仰の聖地たる厳かな空気が漂います。
地蔵岳のオベリスクと富士山
鳳凰三山・地蔵岳の象徴である巨岩オベリスクの背後に、日本最高峰・富士山がすっきりと姿を見せてくれました。名峰同士の贅沢な競演です。
08:43 摩利支天(標高2,820m)
甲斐駒ヶ岳から少し下り、突き出た岩峰・摩利支天へ寄り道。ここにも多くの神像や剣が祀られており、見上げる甲斐駒ヶ岳本峰の岩壁が大迫力で迫ります。
摩利支天からの南アルプス展望
摩利支天の先端からは、遮るもののない大展望。南アルプスの深い谷と重なり合う山並みを心ゆくまで堪能します。
富士山方面の山座同定
青く霞む富士山の端正な円錐形が印象的。時間が経つにつれて徐々に雲が湧き始める予兆が見られます。
09:51 再び六方石へ
摩利支天の周遊を終え、巻き道経由で稜線の六方石へと合流。巨岩を見上げながら駒津峰へと下っていきます。
甲斐駒ヶ岳の雄姿を振り返る
駒津峰へ登り返す道中、振り返れば甲斐駒ヶ岳の白い岩壁が青空に聳え立っていました。見る角度によってまったく異なる表情を見せてくれる名峰です。
甲斐駒ヶ岳と摩利支天のコントラスト
白く輝く本峰と、黒々とした岩峰の摩利支天。二つのピークが織りなす造形美を最後にもう一度目に焼き付けます。
屹立する摩利支天
主稜線から突き出た摩利支天の鋭い岩塔。古来より人々が神仏の宿る地として崇めてきた理由がよく分かります。
10:34 駒津峰から北沢峠への下山へ
駒津峰から双児山を経て、北沢峠のこもれび山荘へと一気に下山。12時44分、無事に北沢峠のバス停へと戻り着きました。3日間にわたる充実した山行の幕引きです。
アクセスと安全登山のポイント
駐車場と交通アクセス
マイカー利用の場合、南アルプス林道バスの起点となる「戸台パーク(仙流荘)」の駐車場(最大5日間で1,000円)を利用します。週末や繁忙期は早朝からバス待ちの列ができますので、余裕を持った到着が必須です。北沢峠からは一般登山道に沿って甲斐駒ヶ岳を目指します。
ルートの難易度と装備への注意
- ヘルメット・グローブ:必須装備です。落石の巣のようなガレ場が連続し、鎖を動かすだけでも石が落ちてきます。
- ガレ場の通過技術:第二高点および鹿窓直下は極めて脆く急峻です。先行者・後続者がいる場合は落石の危険が跳ね上がるため、間隔を空けるなど特別な配慮が必要です。
- ルーファイ能力:六合石室〜三ツ頭間はテープが少なく、迷いやすい踏み跡が錯綜しています。GPS地図でのこまめな位置確認を怠らないでください。
- 水場:六合石室の水場は往復20分以上の急下降・急登となります。暗くなる前に早めの確保を推奨します。
おわりに
「もう二度と行きたくない」と思わせるほどの悪絶なガレ場と、神経をすり減らす岩稜帯。正直なところ、安易におすすめできるルートではありません。しかし、幾重もの試練を乗り越えて立った鋸岳第一高点からの大パノラマと、六合石室での静かな夜は、登りきった者にしか味わえない特別な達成感を与えてくれました。
しっかりとした体力づくりと装備、そしてルートを見極める慎重な判断力。すべてを整えて挑んだからこそ得られた、忘れがたい3日間の記憶となりました。
