鋸山・小鋸山・嵯峨山(房総)|石切の遺構と痩せた尾根を行く潮風の縦走路

はじめに

今回、冬の静かな山歩きとして選んだのは、千葉県が誇る低山界の雄、鋸山からその先へと続く稜線です。観光地としての華やかさを持つ一方で、少し足を踏み入れれば荒々しい岩肌と静寂が待つバリエーション豊かな縦走ルート。心身ともにリフレッシュしたい、そんな思いで房総へと向かいました。

拠点は「道の駅 保田小学校」。かつての学び舎を活かした温かい場所を起点に、鉄道を利用して一駅隣から歩き始める、周回プランを計画しました。期待と少しの緊張感を抱き、朝の冷たい空気の中、歩き始めます。

日付

2026年01月30日

天候

快晴

歩行距離

18.4km

登り(累積)

1,379m

下り(累積)

1,372m

行動時間

7時間54分

山行レポート

07:37 浜金谷駅からスタート

浜金谷駅

道の駅から歩いて保田駅へ向かい、そこから内房線で一駅。浜金谷駅から本日の旅が始まります。早朝の駅舎には、清々しい空気が漂っていました。

階段コース

住宅地を抜け、登山口へ。階段コースと林道コースの分岐。階段は体に応えますが、今回はあえてスタンダードな階段コースを選び、体を目覚めさせます。

石切り場跡

登り始めてしばらくすると、樹間から巨大な石切り場の跡が。その不自然なまでに垂直な造形は、まるで古代遺跡のような荘厳さを醸し出しています。

階段の登り

ひたすらに続く階段。低山とはいえ、急な登りが連続するため、ペース配分が重要です。額ににじむ汗を拭いながら、一歩ずつ確実に進んでいきます。

日本海を望む展望

高度を上げると、視界の先に輝く海が広がりました。冬の強い日差しを浴びてキラキラと光る水面が、登りの疲れを束の間忘れさせてくれます。

歴史を刻む石切り場見学

岩壁の基部

巨壁の基部へと到着しました。見上げれば、首が痛くなるほどの高さまで続く岩肌。かつての職人たちがここで汗を流していた歴史の重みを感じます。

雪の跡

岩陰には、前日に降ったものでしょうか、僅かに雪が残っていました。温暖な房総と言えども、山の上はやはり冬。足元の変化にも注意を払います。

ピトンの跡

オーバーハングしたルーフの下に、古いピトンを発見しました。かつてここはクライマーたちの修練の場でもあったのでしょう。その開拓者精神に敬意を表します。

見事な石切り場

垂直に、そして几帳面に切り出された岩肌。人間が自然に対して残した「傷跡」でありながら、どこか芸術的な美しさを湛えているのが印象的です。

08:52 地球が丸く見える展望台での至福

展望台での休憩

「地球が丸く見える展望台」へ。まだ人影のない静寂の中で、ゆっくりと朝食を摂り、コーヒーを。この広大な景色そのものが、何よりのご馳走です。

富士山遠望

東京湾の向こうには、真っ白に雪を纏った富士山が浮かんでいました。内房の青い海とのコントラストは、この時期だけの贅沢な眺めです。

鋸山山頂

鋸山山頂に到着。展望は北側に限られますが、周囲の低山たちが織り成す重層的な山並みが、房総らしい優しい表情を見せてくれます。

先の稜線

山頂を後にし、目指す小鋸山・嵯峨山方面を望みます。ここから先は「観光」ではなく、本当の意味での「登山」が始まるのだと、気持ちが引き締まります。

10:30 小鋸山への稜線へ

鋸山林道口

鋸山林道口へ一旦降ります。これまでの観光地らしい賑わいは完全に消え失せ、山と自分だけが対峙する、静謐なエリアへと踏み込んでいきます。

小鋸山登り口

林道脇の分かりにくい登り口。ここからは「関東ふれあいの道」ではなくなるため、看板もベンチもありません。頼りは赤テープと地図のみです。

痩せ尾根の歩行

稜線上には、緊張感を強いる痩せ尾根が連続します。しかし、足元をしっかりと確認しつつ進めば、そのスリルこそが縦走の醍醐味であると感じられます。

小鋸山手前

小鋸山の手前で待ち構えていた急登。三点支持を意識し、力強く登り詰めます。標高は低くても、山の厳しさを教えてくれるような斜面でした。

小鋸山直下

小鋸山山頂直下。一見すると絶壁のように見えますが、落ち着いて右側の巻き道を辿れば安全に登りきることが可能です。視覚的な迫力が凄まじい。

11:13 小鋸山と千バンドキャニオン

小鋸山到着

小鋸山に到着。賑やかな鋸山とは対照的に、人影のない静寂が支配する山頂。ここでゆっくりと昼食を摂り、自分だけの贅沢な時間を過ごします。

鋸山を振り返る

振り返れば、険しい稜線を晒した鋸山の雄姿が。低山ながらもこれほどダイナミックな景観を見せてくれる房総の山のポテンシャルに驚かされます。

千バンドキャニオン

目の前に現れた「千バンドキャニオン」。採石によって生まれた断崖絶壁が、まるでアメリカのグランドキャニオンを思わせる異彩を放っています。

分岐の修正

途中で道を間違えかけましたが、正しい分岐を見つけました。看板が回転して分かりにくくなっていたため、後続の登山者のために修正しておきました。

キャニオン内部

キャニオンの核心部。かつての工事現場の跡とも言える場所ですが、長い年月を経て自然の一部として馴染んでいる姿には、不思議な風格があります。

テーブルマウンテン

小鋸山と「テーブルマウンテン」と呼ばれる独特な形状の山を振り返ります。地形の面白さが次々と現れる、飽きのこないルートです。

稜線の終盤を往く

最後の一峰

最後の一峰、嵯峨山が近づいてきました。アップダウンの連続で、足取りは少し重くなってきましたが、美しい稜線が心を前に進めてくれます。

下山分岐

下山ルートの分岐点。ここで降りれば楽になれますが、せっかくの好天。初志貫徹で嵯峨山を目指し、さらなる展望を求めます。

スイセンピーク山頂

13:14 スイセンピーク山頂に到着。周囲は木々に囲まれ展望はありませんが、このルートを歩き通している証としての重要なポイントです。

嵯峨山手前の休憩地

嵯峨山手前には、心憎いばかりの展望地が。手作りの丸太椅子に腰掛け、里山を抜けてくる風を感じながら、呼吸を整えます。

嵯峨山山頂

13:28 嵯峨山山頂。立派な看板が出迎えてくれました。山頂自体の展望は限られますが、ここまで辿り着いたという事実に満足感がこみ上げます。

展望スポット1への道

少し足に疲れが溜まってきましたが、最後に「展望スポット①」へ。ここが本日の山行における最後の楽しみになります。

最後の休憩

展望スポット①。先程の椅子があった場所の方が個人的には好みでしたが、ここもまた静かで良い場所です。さて、いよいよ下山の途につくとしましょう。

下山、そして道の駅へ

下山の徒渉

下山道でのちょっとした徒渉。滑らないよう慎重に。最後まで気を抜かないのが登山の基本です。水のせせらぎが疲れた体に心地よく響きます。

梅の花

麓に降り立つと、そこには満開の梅の花が。厳しい寒さの中でも春の準備を進めるその姿に、どこか勇気づけられる思いです。

水仙の群生

この界隈は水仙の栽培が盛んで、白く可憐な花が道の両側に並びます。その清々しい香りに包まれ、登山の終わりが近づいていることを実感します。

ゴール地点

15:31 「道の駅 保田小学校」へ帰還。廃校を活用したノスタルジックな校舎を眺め、長い一日の終わりを実感します。実に歩き応えのある縦走でした。

アクセスとアドバイス

起点・駐車場

今回は「道の駅 保田小学校」を起点にしました。平日は第2駐車場の利用が推奨されます。下山後は車道歩き(約45分)を余儀なくされましたが、路肩が非常に狭く気を使うため、あらかじめバスの時刻を正確に把握しておくことを強くお勧めします。

コースの注意点

  • 小鋸山付近:本格的な痩せ尾根と急登が連続します。低山と侮らず、しっかりとした登山靴と装備で臨んでください。
  • 分岐の把握:点線ルート区間は看板が不鮮明な箇所があります。こまめなGPS確認が必要です。
  • 体力配分:アップダウンが非常に激しいため、ペース配分を考え、水分と行動食を十分に携行してください。

おわりに

房総の山を繋ぐ今回の縦走は、想像以上にタフなものでしたが、それを補って余りあるダイナミックな景観に出会うことができました。石切り場の歴史、痩せ尾根の緊張感、そして早春を告げる水仙。一日のうちにこれほど多くの表情を楽しめるルートは、他に類を見ません。

しっかりと準備を整えて、あなただけの房総の景色を探しに、ぜひ足を運んでみてください。きっと、低山の概念を覆すような素敵な体験が待っています。

ルートマップ・標高グラフ

Yamatavi

記事作成者

Yamatavi

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です