はじめに
秋の深まりとともに、私の心は西上州の鋭い岩峰へと向いていました。今回選んだのは、日本三大奇景の一つにも数えられる「妙義山」。その中でも、白雲山から金洞山へと続く「表妙義縦走」は、国内屈指の難コースとして知られています。
近頃は仕事の忙しさにかまけ、少し身体が鈍っている自覚もありましたが、あの荒々しい岩肌と対峙することで、自分自身を研ぎ澄ませたい——そんな静かな昂ぶりを胸に、群馬へと車を走らせました。強風の予報に一抹の不安を覚えつつも、それすらもこの山の厳しさの一部なのだと言い聞かせ、登山靴の紐を締め直しました。
日付
2025年11月07日
天候
晴れ、強風
歩行距離
13.1km
登り(累積)
2,356m
下り(累積)
2,384m
行動時間
9時間03分
山行レポート
06:14 朝焼けの中を出発
道路沿いの鳥居をくぐる頃、ちょうど太陽が顔を出しました。朝焼けに染まる空の下、今日という一日の無事を祈ります。気温は低いものの、歩き始めればすぐに身体が温まってくるでしょう。
06:26 妙義神社から山道へ
登山口となる妙義神社。その荘厳な佇まいに背筋が伸びる思いです。ここから先は一般の観光ルートを離れ、本格的な登山道へと足を踏み入れていきます。
06:58 妙義のシンボル「大の字」
麓からもはっきりと見える「大の字」に到着。ここは展望ポイントとしても素晴らしく、眼下に広がる街並みを見渡せます。鎖場の予行演習としても最適な場所です。
最初の試練・奥の院
白雲山への核心部へと向かう「奥の院」。垂直に近い岩壁に垂れ下がる長い鎖。ここからが表妙義の本番だと、岩肌が語りかけてくるようです。
ビビリ岩・背びれ岩を越えて
その名の通り緊張を強いられる「ビビリ岩」や、ナイフリッジのような「背びれ岩」。足元が切れ落ちた高度感の中、鎖を頼りに慎重に歩を進めます。
09:13 最高峰・相馬岳
最高峰の相馬岳(1,104m)に登頂。一息つきながら、これから向かう金洞山方面の稜線を眺めます。ここから先は一度高度を下げ、さらなる難所へと向かうことになります。
10:48 難関「鷹戻し」
表妙義のハイライト、鷹戻し。そそり立つ絶壁を鎖一本を頼りに登り詰め、あるいは下ります。今日は強風が吹き荒れており、煽られないよう必死に岩にしがみつきました。
絶景のご褒美
鷹戻しの上部から振り返ると、先程までいた白雲山が美しく聳えています。この高度感、この絶景こそが妙義登山の醍醐味。苦労して登った者だけが味わえる特等席です。
腕力を要する二段ルンゼ
東岳手前の二段ルンゼ。ここは下りが特に厳しく、腕力で身体を支える場面が多くなります。以前あったという途中で途切れた危険な鎖はなくなり、少しは安心感が増しましたが、油断は禁物です。
眼下に広がる奇峰の森
眼下には妙義特有の奇岩群が広がります。自然の造形美が生み出した複雑な迷宮を、天空の道から眺める。なんとも贅沢なひとときです。
12:53 石門巡りで一息
険しい縦走コースを終え、石門巡りのエリアへ。巨大な岩のアーチである第四石門に辿り着くと、ようやく緊張感から解放されます。ここからは中道を通って穏やかに戻りましょう。
15:10 妙義神社へ帰還
無事に妙義神社まで戻ってきました。境内の可愛らしい灯籠が、疲れ切った身体を優しく迎えてくれます。厳しい山行だったからこそ、この平穏な景色が心に染み入ります。
アクセスとアドバイス
1 駐車場・移動
「道の駅みょうぎ」の駐車場は観光客用です。登山者は道の駅入口にある案内に従い、周辺に点在する無料の「登山者専用駐車場」を利用してください。朝早い時間であれば比較的余裕がありますが、紅葉シーズンは混雑が予想されます。
2 装備と注意点
- グローブ:鎖場が連続するため、グリップの効く登山用グローブは必須です。
- 腕力と持久力:特に二段ルンゼや鷹戻しは腕力に頼る場面が多いです。上半身の体力も温存しておきましょう。
- ルーファイ:相馬岳から金洞山への下りは迷いやすい箇所があります。ロープ等の目印を慎重に追いましょう。
おわりに
紅葉は少しだけ早かったようですが、地元の方の話では今年はこのまま散ってしまうかもしれないとのこと。自然の巡り合わせは、いつだって一期一会です。
表妙義縦走は、決して安易に勧められる道ではありません。しかし、そこにあるのは、自らの手で岩を掴み、一歩ずつ重力に抗う者だけが得られる濃厚な時間。皆さんも、十分な経験と準備を携えて、この岩の聖地が放つ熱量を感じてみませんか。
