この記事は2019年のお盆休みに実行した縦走山行についての記録です。
本日の工程
折立登山口-->太郎平-->薬師岳-->スゴ乗越 (2019/08/10)
いよいよスタートした久々の長期縦走。
意気揚々という言葉が虚しく、早速の意気消沈。登山道の渋滞だ。
一歩登っては停止、、といった状況が続く。登山道も狭く、道を譲るのもキリがなく億劫だろう。グループとグループの境目もわからない。人と人との距離も近いため、ストックも危険物となる。かと言って距離を空けば今度は感覚が近い後続者にに踵を蹴られる。
雰囲気は最悪で、大きな声で「譲らないから悪い」と独り言を吐く人もいた。これがずっと続くと帰りたくなるが、せいぜい太郎平までだろうと考えて耐える。
心配事はあった。台風が接近する日が不明なのだ。そのため、できる限り日程を短縮したい。今の所、流暢に6泊もする程待ってくれなそうだった。そう、太郎平を通り越してスゴ乗越まで足を進めたいとも考えいていた。
とはいえ、せいぜいできる事はしびれを切らしたトレイルランナーに便乗して数人抜くことぐらいだった。
樹林帯を抜け、三角点があるベンチに達すると薬師岳と稜線が目の前に広がった。もちろんベンチは多くの人が休憩している。ここから道が広くなり、渋滞は解消された。こう見ると思ったほど人は多くなく、誰かの吠えた通り、”譲らない渋滞”だったかもしれない。
気温は十分に上がり、暑い。日差しを遮るものがなくなり、登れば登るほど涼しくなる事を期待してなだらかな稜線を上がってゆく。
しっかりと造られたベンチが随所にあるが、最初のベンチ以外は休む人が少なかった。
やがて太郎平小屋が見え、最後の木道を歩いて稜線に到着した。
太郎平小屋の前は見事なまでにビアガーデンの雰囲気だった。生ビールも提供されていて、各ベンチはワイワイと大盛りあがりだ。
ここから稜線を北に歩き、少し下ったところに薬師峠のテント場がある。
テント場は思ったほど混んでいなかった。時計を見るとまだ11時台。スタートが出遅れ、ゆっくり登ってきた割には早い時間だと感じた。
まだまだ張れる場所はありここで手を打っておかないと、午後にはキャンプ地が埋まってしまうことが予想されるが、やはり、スゴ乗越まで足を伸ばそうと決断する。
キャンプ地の水を汲んで薬師岳に登り始める。このあたりに来ると人も少なく、時折、空荷で薬師岳を往復する人に出会う程度だ。雰囲気も和んできて、合う人と会話を交わしながら登っていく。
前回はまだ冬山とも言える今年のゴールデンウィークに来たばかりではあったが、大きく異る大地の景色に感嘆を覚えつつも先に進む。このカールで滑っていた人がいたなあとか思い出したりする。
薬師岳山頂に到着。
パノラミックな景色は夏でも冬でも大きく変わらず色違いに感じる。
流石に、山頂は混雑というほどではないが、多くの人で賑わっていた。
軽く休憩してエネルギーを補給し、山頂を尻目に稜線を北へ進む。
この時間からにスゴを目指す人は少ないだろうから、ここからはほとんど人に合わなくなった。
北薬師岳まではコースタイム30分の所、1時間近くもかかった。暑さで疲れはあったので、バテてきたかなと思ったが、いくらなんでもかかりすぎだった。北薬師岳の山頂で薬師岳を振り返りながら休んでいると、ちょうど、私と同じく折立から一気にスゴに向かっている同年代の三人組に出会った。これから降りていく稜線にはガスがかかり始めていた。
刻々と角度を変えていく赤牛岳。読売新道が徐々によく見えてきた。
稜線はぐんぐんと高度を下げ、岩稜帯が緑の多いハイマツ帯や低木帯へ、更に高度を下げ、樹林帯へと入っていく。ガレ場の急な下りが続き、重い荷物と過激な下りに足が疲れて滑って転びそうになる。
樹林帯に入ってしばらくすると、発電機の音が聞こえてくるとやがてスゴ乗越小屋だ。
心配していたキャンプ場、最近のこの時期、北アルプスでは昼ぐらいに到着しないとまともな所は空いていない、、と言うちょっと閉口する状態だからだ。
そこを17時過ぎに到着してしまった。この工程を選んだのは台風に対しての焦りもあったが、10年ぐらい前の記憶ではこの場所はお盆でさえガラガラだったのだ。最近は上記の理由によりそれは無いかなと思っていたので、心配だけどなんとかなるだろうぐらいの感覚だった。
結果、張れないことはないぐらい。
たくさんのテントがひしめいていて一瞬引いたが、少し奥に一張だけ張れるスペースが確保できた。木に囲まれ小寂しいが、その代わり静かでよく眠れそうなスペースだった。
水を汲みに小屋の方に戻ると、北薬師岳で会った三人が、「ちゃんと着いたじゃないですか!よく頑張りましたね!」と出迎えてくれる。
そのまま小屋の前のテーブルで4人でお疲れ会となった。皆、通常なら2日の工程を一気に歩いて大変だったという気持ちを共有できて癒やされた。
明日は無理することは無く、予定通り五色ヶ原までの工程。朝はゆっくりできそうである。いつの間にかガスも張れて、明日進む方面を見ると、スゴの頭が谷の向こうに立ちはだかるように聳えていた。
続く